日本の金融理論教育をリードするシグマインベストメントスクール


menu

●日本FP協会 継続教育対象講座●  難しい数式を使わずに、日経225オプション取引の基本がわかる
 【eラーニング】日経225オプション・トレーディング 初級コース

PR

エクセルを使ったモンテカルロ・シミュレーション

第13回 シミュレーションによるオプションプレミアム算出 (その1)

 1. はじめに

モンテカルロ・シミュレーションによるオプション・プライシングの話が続いています。前回までで、為替のコールオプションの価値を求めるシミュレーションの基本的な考え方の説明はすべて終わっていますので、今回は早速シミュレーションシートの紹介から始めましょう。

 2. シミュレーション・シートのご紹介

評価対象のオプションを再掲しておきます。

ドル円通貨コール・オプション
 満期 : 1年
 現在のドル/円為替レート : 1ドル = 80 円
 行使価格 : 80 円

※前提となる金利等の条件は、以下の通りです。
 円金利 : 0.2%
 ドル金利 : 0.5%
 ボラティリティ : 10%

EXCEL で 10,000 回のシミュレーションを行い、オプション価値を求めたのが以下のシートです。

figure
図1: シミュレーション結果(クリックすると拡大します)

セル D11 のプレミアム推定値という部分が、このシミュレーションによるコール・オプションのプレミアムを計算している部分です。 3.073 円ということになります。

 3. シートの説明

シートの各部分を説明していきましょう。最初のオプション条件という部分とは、プライシング対象のオプションの条件が入力されています。

この部分の最後のドリフトというところ(セル D8 )が重要です。これは、前回ご説明した、リスク中立確率下におけるオプション価値の期待値を求めるための μ の値が入っています。前提となるモデル式や μ を決めるための考え方などは、前回の記事をご参照ください。

具体的なμの計算式だけ述べておくと、

figure

となります。
ただし、 r : 円金利、 q : ドル金利、 σ : ボラティリティ を意味しています。
金利はいずれも「連続複利」ベースの金利を使います(現実的には、満期までの期間に対応する通常の円金利やドル金利をそのまま使っても大差ありません)。

この式で計算される μ を使って、1年後のドル円為替レート: S1 の値を、以下の(2)式で算出しているのが I 列の部分です。

figure

S0 とは現在のドル円為替レートのことです。この式の T とは(年単位の)オプション満期までの期間を意味しますが、ここでは満期が1年なので、以後、明示的に計算に入れる必要はありません。 (2)式で1年後のドル円為替レートを計算するためには、 W_T という値を入力しなければなりません。

この値についてはすでにかなり説明しました。 この問題においては、1年後のブラウン運動の値を意味します。1年後のブラウン運動の値は(以前説明したように)「期待値ゼロ、標準偏差1」の正規分布に従います。 よって、(2)式の値は W_T の値次第で様々な値をとるわけです。そして、そのさまざな1年後の為替レートの値に基づき、さまざまな1年後のオプション価値になるわけです。

「期待値ゼロ、標準偏差1(=標準正規分布)」の正規分布の値の発生のさせ方は、もうすでにこの講座で散々出てきたので説明は不要でしょう。「 = NORMSINV ( RAND ( ) ) 」 とセルに打ち込んでやれば、このような正規分布に従う確率変数値が出力されます。

このシートでは G 列にこの関数が入力されており、さまざまな W_T の値が出力されるようになっています。 次に、この W_T の値にボラティリティ(ここでは 0.1 = 10% )を掛けあわせたものが次ぎ H 列に、そして(2)式により1年後の為替レートを計算したものが I 列に表示されています。

具体的な計算方法ですが、 er という計算は EXCEL では「 = exp ( r ) 」 とすれば計算できるので、例えばセル I2 には「 = D$2 * EXP ( D$8 + H2 ) 」 という式が入っています。

そして、 I 列の為替レートに応じた1年後のオプション価値の値が J 列に計算されています。

リスク中立確率を使ったプライシングの原理、すなわち「『リスク中立確率下におけるデリバティブの将来価値の期待値』の現在価値」がデリバティブの価格ですから、 J 列の平均値をとって、それを金利で割り引けばデリバティブの価格になります。

ここでは、 J 列に 10,000 個のオプション価値が出力されています。 この J 列の平均値を計算しているのがセル D10 、そしてそれを1年の金利で割り引いて(ただしここでは連続複利の金利で割り引いている)オプションの価値を求めているのがセル D11 です。

著作権・免責事項

  • 「やさしい金融エンジニアリング講座」(以下、本解説集)の文章、図表などの著作権は、シグマベイスキャピタル株式会社に帰属しますので、複製・転載・引用・配布などは一切禁止します。
  • 本解説集の利用により生じた損害はいかなる理由であれ、一切責任を負いかねますので予めご了承下さい。
  • 本解説集は、予告なしに内容が変更・削除等されることがあります。
  • 内容に対するご質問にはお答えすることはできませんので、ご了承下さい。

【シグマインベストメントスクール】ならでは、タイムリーで深い実務的な知識が学べる・・・