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【証券アナリスト対策】チャレンジしたいが数学が苦手という方へ
 金融数理Σ3級コース

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エクセルを使ったモンテカルロ・シミュレーション

第4回 分散共分散法による VaR の考え方 (その2)

 3. 分散・共分散法との関係

ところで、正規分布について良くご存知の方は、以上の作業を不思議に思っている方がいらっしゃるかもしれません。実は本問題の VaR は、簡単に計算で求めることができるのです。
(話が少し数学的になりますが、重要な話でもあるので少々我慢してお付き合いください)
実は、正規分布に従う確率変数については、以下のことが分かっています。

■ 正規分布についての重要な定理
k をある定数とするとき、どんな期待値、標準偏差の正規分布であれ、この k を使って
期待値 + k ×標準偏差        (2)式
として表される値 以下になる確率、以上になる確率は等しい。

これだけでは、何を言っているのか良く分からないと思うので、具体例を挙げて説明しましょう。

例えば k=2 とします。
このとき、(2)式により計算される値は、例えば、
・期待値が 1 、標準偏差が 2 の正規分布(この確率変数を X とします)ならば、
  1+2×2=5 となります。
・期待値が 2 、標準偏差が 3 の正規分布(この確率変数を Y とします)ならば、
  2+2×3=8 となります。
そして、 X が 5 以下になる確率と、 Y が 8 以下になる確率は同じで、両者ともに 97.725% となります。

今、 k=2 というきりのいい数を使いましたが、どんな中途半端な数、あるいは負の数などであっても、同じ k の値を使って、(2)式で表される値以下になる確率を考えると、どんな正規分布でも同じ確率になります。

ということは、もちろん標準正規分布の場合も、 k さえ同じならば同じ確率になります。ところで、標準正規分布を前提として(2)の値を計算するとどうなるでしょうか。 0(期待値)+ k×1(標準偏差)=k となります。つまり、ある k を前提にして、標準正規分布における(2)の値を計算すると、 k そのものになります。
ということは、逆に N(k)=P (標準正規分布に従う確率変数が k 以下の値を取る確率が P)であるとき、期待値 μ 、標準偏差 σ の正規分布が μ+kσ 以下の値をとる確率は、やはり P となります。

このことから、今まで説明した知識を使って、正規分布に従う確率変数の上から 99% 、言い換えると下から 1% の値を表す(2)の表現が得られます。第2回の「2. 標準正規乱数の作成」 の説明で、 NORMSDIST(-2.326)=0.01 であること、つまり、標準正規分布に従う確率変数が -2.326 以下の値をとる確率が(約)1% であることを述べました。
よって、上で述べたことより、期待値μ、標準偏差σの正規分布に従う確率変数が、

μ-2.326×σ        (3)式

以下の値をとる確率は 1% であることになります。

ここで問題に戻ると、我々が計算したいポートフォリオの1日あたりの価格変動 ΔP は、期待値ゼロ、標準偏差 20(円)の正規分布に従うのでした。ということは、 ΔP の下から 1% の値は、(3)式より
  -2.326×20=-46.52円
となります。

シミュレーションの結果では -46.44円 でしたから、シミュレーションでもほぼ正しい値が得られていたことが分かります。

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